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気になるアレコレまとめました!医師の為の歯科コラム
歯科コラム

動物病院との連携で評判アップ!歯科医師としての知識が人間以外にも役立つ

歯に気を遣い、悪いところがあれば治療をするのは人間だけと思われている歯科医師は非常に多いことでしょう。
しかし、近年では愛するペットに元気に長生きしてほしいと考えるペット愛好家が増えてきており、そういった方たちはペットの歯の状態にも気を配っているのです。
ところが、動物の口腔ケアを正しく把握している飼い主はあまりおらず、また正しい口腔ケアの知識を得ることも難しい現状が続いています。その理由は、ペットの正しい口腔ケアを指導できる獣医は基本的におらず、また動物のための口腔ケアを指導している歯科医師もいないからです。
さらに動物の性格によっては日常的なケアも難しく、虫歯や歯周病のリスクを心配している飼い主もいます。そんな状況を危ぶみ、動物病院と提携し動物のための歯科治療を行う歯科医院が新たに誕生したことをご存知でしょうか。
今回は、まだ全国的にあまり知られていない動物のための歯科治療についてご紹介します。

動物病院で歯の治療ができない理由

動物病院で歯の治療ができない理由

ペットが歯の病気に罹ってしまった場合、動物病院で行う処置が何もないわけではありませんが、できることは非常に限りがあります。というのも、基本的に獣医が行える歯の治療は抜歯しかないからです。
抜歯は問題がある歯を抜いてしまうという至って単純な治療であるため、歯科医師のように専門的な知識がなくても簡単に行えてしまうことが多いのです。
歯を失っていけば次第に硬い物を食べられなくなり、動物にとっては「噛む」という生きていく上でとても重要なことができなくなることで、健康や寿命にも大きく影響します。
大切なペットに長生きしてほしいと考える飼い主は多く、人間同様にできることならば抜歯以外の治療ができればと考えています。そういった現状から、まだ残せる可能性がある歯を抜いてしまわずに適切な治療ができれば、と考えている獣医も増えてきています。
しかし獣医学では歯の治療を専門的に学べないため、歯科医師のように適切な歯の治療を行うことは非常に難しいのです。
そのため、飼い主は積極的にペットの歯のケアをする以外にペットの歯を守る方法がなく、獣医も動物の歯の治療について試行錯誤を繰り返すしかありませんでした。

適切な治療するためには

適切な治療するためには

動物の歯を抜歯以外の方法で虫歯(根管治療)や歯周病の治療をするためには、歯科医師の専門的な技術と知識が不可欠になります。
さらに、動物は人間と違いおとなしく歯の治療をさせてくれるものではないため、動物の性格と治療のケースによっては全身麻酔を使用しなくてはいけません。
動物の全身麻酔をする場合は、必ず獣医の専門的な知識と技術が必要になるため、歯科医師だけで治療を行うことは難しくなります。よって動物の歯を正確かつ安全に治療を行うためには、獣医と歯科医師のチーム連携が必要になります。
さらに動物の歯を適切に治療するためには、医療の分野が違う獣医と歯科医師の互いの知識、観点、技術を十分に理解し合うことが大切になります。どちらも不可欠な存在であることを理解し、適切な環境と正確な技術によって動物たちの歯を安全に治療することができるのです。

歯の治療が難しい例

歯の治療が難しい例

動物の歯の治療は、非常におとなしい性格をした動物の簡単な歯の掃除といった場合などを除けば、ほとんどのケースで全身麻酔が必要になります。
ところが動物によっては何らかの事情を持ち、全身麻酔による異常が起きる場合があるため、歯の治療が難しくなってしまうこともあります。
全身麻酔が危険となる例としては、短頭種というパグやブルドッグ系などの系統の犬の場合。これはもともと、通常の犬よりも鼻が短いために呼吸器系が弱い傾向にあることから、全身麻酔を忌避することがあります。
また循環器系、呼吸器系、神経系などの病気を持つ場合と、肝臓と腎臓に持病を持っている場合などは全身麻酔のリスクが高くなります。
以上のことから必ずしも、すべての動物に全身麻酔が可能であるわけではありません。
さらに、麻酔を使用せず体を抑えて治療をする場合でも、少なからずリスクはあります。それは椎間板ヘルニアを持つ動物の場合と、呼吸器系と心臓の病気がある場合です。
これらの場合は体を抑えることで症状が悪化することがあるため、治療の際は慎重な判断が必要になります。

簡単にできる口腔ケア

簡単にできる口腔ケア

さまざまな理由でペットの歯の治療が難しい場合でも、日常的にケアを行うことで歯周病や虫歯から歯を守ることができます。
特に全体の歯のなかでも、一部の歯は重点的にケアをすることが大切になります。具体例としては、犬の歯のケアを行う場合。犬の歯は大きく部位を分けると前から前歯(門歯)、犬歯、前臼歯、後臼歯に分けられます。
そのなかで最も歯周病のリスクが高いのが前歯(門歯)で、その次に高いのが前臼歯です。これらの歯は特によく磨くようにしなくてはいけません。
またプラークや歯石がよく付着しているのは、歯の外側の部分です。内側(舌側)は常に舌を動かしていることから汚れがあまり付着することがありません。
そのため、歯の外側を歯みがきシート、布(ガーゼ)、歯ブラシなどで念入りに磨くようにしましょう。
なかには予防効果を期待して人間用の歯みがき粉(ペースト)を使おうとする飼い主がいるようです。しかしキシリトールを配合している歯みがき粉を犬に使用すると、低血糖を引き起こしてしまうため決して使ってはいけません。
以上のことに注意し継続してケアをしていただければ、虫歯や歯周病のリスクを低く維持し、健康的な生活を送れるでしょう。
また歯の治療は全身麻酔を使用することで、何も病気をしていない健康的なペットといえども少なからず体に負担をかけてしまいます。それを考えれば日常的なケアでペットの歯を守り、治療はなるべく避けることが最大のベストと言えるでしょう。

広く求められている歯科医療

これまでペットを飼われている患者に、ペットの歯の治療について相談を受けたことがある歯科医師は多いのではないかと思います。
また患者だけに限らず、自身も愛するペットを飼われている歯科医師や衛生士も少なからずいるのではないでしょうか。
動物の歯の治療ができないかと頭を悩ませている獣医や、ペットの歯を心配する飼い主は今後も増えていくでしょう。それに伴い動物の歯の治療もできる歯科診療が求められてきていることも伺えます。
これを機に、新たな活躍の場として動物病院と連携した診療スタイルをぜひ考えてみてはいかがでしょうか。

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