糖尿病予防は歯科医で。進む内科との医療連携
では、糖尿病と歯周病にはどのような関係があるのでしょうか?そして、歯医者の側では歯周病を通して、内科とどのように連携し糖尿病を予防しようとしているのでしょうか。
今回は、そんな歯周病と糖尿病の関係性や、歯科医と内科との医療連携などについて詳しくご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
糖尿病ってなに?
人は、食事をすることで、食べ物に含まれている糖分を身体に取り込みます。
糖尿病になると、インスリンの働きが低下したり、インスリンが作り出されなかったりすることで、糖が身体に吸収されにくくなり、血糖と呼ばれる血液中の糖分の濃度が高くなってしまいます。糖尿病とは、こうして慢性的に血糖値が高くなってくる病気のことです。
血糖値が高い状態になると、喉の渇き、多飲、尿量の増加、体重減少、体力の低下、疲れやすさ、細菌などによる感染症を起こしやすくなる、傷の治りが悪くなるなどの影響が現れます。ひどくなると、意識を失ったり、ショックを起こしたりして、場合によっては昏睡状態に至ることもあります。
歯周病ってなに?
歯周病とは、歯を支える組織である歯周組織に生じる病気です。歯周組織は、歯肉・歯槽骨・セメント質・歯根膜から構成されています。歯肉とは、いわゆる歯ぐきです。歯槽骨は歯を直接支えている骨のことです。歯根膜は、歯槽骨と歯をつなげている薄い靭帯のような組織のことで、セメント質という歯根の表面に付着しています。
歯周病は、その進行度合いから歯肉炎と歯周炎に分けられますが、どちらも歯周病菌というお口の中にいる細菌が原因で生じる細菌感染症です。
糖尿病と歯周病との関係性
■糖尿病から歯周病への影響
糖尿病になると、身体の免疫力が低下してしまい、細菌などの感染症になりやすくなります。
歯周病も細菌感染症の一種です。糖尿病になると、歯周病菌の活動を抑える能力が低下してしまいますので、歯周病になるリスクが高まると同時に、悪化しやすくなります。
■歯周病から糖尿病への影響
歯周病によって、歯周組織の内部からは歯周病に関連した炎症性物質が放出されるようになります。
歯周組織には血管が走っています。歯周病によって作り出された炎症性物質は、血管を通して、身体の中に広がっていきます。
身体中に広がった炎症性物質には、インスリンの効果を低下させる働きがあります。その結果、糖尿病が進行しやすくなるのです。
そして最終的には、歯周病が悪化し、糖尿病が・・・という悪循環にも陥りかねません。
歯周病治療で糖尿病が改善される
糖尿病と歯周病は密接な関係にあります。歯周病を改善させれば糖尿病にはどのような影響が現れるのでしょうか。
歯周病が治療を受けることにより、歯周組織の状態が改善されると炎症性物質が体内に放出されにくくなります。すると、インスリンの働きを低下させる要因が減少する効果が生まれるのです。内科での糖尿病の治療だけでなく、歯周病の治療を行うことで、糖尿病をさらに改善させることが可能になるでしょう。
歯周病の治療について
歯周病の治療は、患者さんが行うセルフケアと、歯科医院で歯医者が行うプロフェッショナルケアによって行われます。
歯周病の原因である歯周病菌は、歯の表面にあるプラークと呼ばれる白いカスのようなものの中にいます。プラークを取り除くことをプラークコントロールと言いますが、これが歯周病治療の基本であり、要点でもあるのです。
セルフケアでは、食後の歯みがきの時、歯ブラシだけでなく歯間ブラシやデンタルフロスを使って、歯の表面から歯と歯の間まで丁寧に磨くことでプラークを取り除くようにします。
歯の表面にはプラーク以外に歯石も付いてきます。歯石とは、プラークが石のように硬くなったもののことで、その表面は非常に粗造になっており、さらにプラークがつきやすくなる原因になります。
プロフェッショナルケアでは、この歯石を取り除いて、プラークコントロールをしやすくします。
このようにして歯周病を治療し、歯周組織の状態を良好な状態にしていくわけです。
まとめ
糖尿病は、血糖値が慢性的に高くなる病気のことです。今までは内科だけで糖尿病の治療が行われてきました。
ところが最近になり、糖尿病と歯周病が密接な関係にあることが明らかとなり、歯周病の治療で糖尿病が改善されることが分かってきました。
歯周病の治療は、内科医にはできません。歯医者や内科医が連携して治療に当たることで、糖尿病の治療成績をより向上させることができます。
糖尿病を指摘された場合は、歯科医院を一度受診し、歯周組織の状態を歯医者に診てもらうことをお勧めします。