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歯科コラム

第111回から歯科医師国家試験が変わる|変更点と日本の歯科医師国家試験について

厚生労働省から、平成30年3月に実施される「第111回歯科医師国家試験」の内容が変更されると発表がありました。従来の歯科医師国家試験と比較し、変更点をはじめ出題内容や合格基準、傾向などについて紹介します。

4年毎に出題傾向が見直される

4年毎に出題傾向が見直される
厚生労働省から、第111回歯科医師国家試験の出題基準が発表されましたが、この出題基準は1985年の策定以来、歯科医療や歯学教育の変化や内容に沿って、4年ごとに見直しが行われています。ブループリントと呼ばれる歯科医師国家試験設計表に出題総数、必修問題数などが記載されているため、どの分野がどのくらい出題されるのか、試験対策の計画を立てるために役立てると良いでしょう。

歯科医師国家試験改善の概要と変更点

今回見直しと変更にあたり、出題傾向は第111回から第114回までこの基準で出題されるとみなされます。これまでの概要と比較し、新たに変更及び改善された点は以下のとおりです。

■出題数
従来の365題から必須問題が80問、一般問題(総論)が100題、一般問題(各論)は80題、臨床実地問題が100題の計360問へ。そのうち必須問題は従来の70問から80問に増加します。それぞれをパーセンテージで分類すると、「必須の基本事項」が約20%から約22%、「歯科医学総論」が約30%から約28%、歯科医学各論が従来と変わらず約50%というように分けられています。

■出題形式
これまでの出題形式に加え、①必要に応じて、5つの選択肢の中から3つの正解を選択する「×3タイプ」、②5つの選択肢の中から4つの正解を選択する「×4タイプ」、③治療手順などを解答させる非選択の「順序問題」を使用する予定になっています。

■出題基準
社会情勢の変化に合わせて、以下の項目の充実が図られます。
① 高齢化などによる疾病の変化と、それに伴う歯科治療の変化に関する項目
② 地域包括によるケアシステムの推進と、その他医療機関をはじめとした各機関との連携等に関する項目
③ 口腔機能の維持と向上、摂食機能障害への歯科治療に関する項目
④ 医療の安全やショック時の対応、歯科医療倫理等に関する項目

となっています。

必須の基本的事項の変更点

平成26年度と比較してみると、大きな項目は17個であったのに対し、平成30年では13個と減少しています。その中でも特に注目すべき点は、「社会と歯科医療」が従来の2%から11%と激増している点です。これは高齢者の増加による近年の社会状況の変化によるものと考えられます。

その他大きな変更点として、「歯科医療の質と安全の確保」「診療記録と診療情報」「医療面接」の3項が削除となっています。専門家によると、項目が簡素化された分、変更がなく従来どおりの項目に統合されたのだろうという見解のようです。

歯科医学総論の変更点

歯科医学総論の変更点
これまで総論XⅠだった項目を削除、統合し、総論Ⅷとなっています。主な変更点は以下のとおりです。

① 総論Ⅱの「健康管理・増進と予防」が削除され、総論Ⅰ「保健・医療と健康増進」へ統合
② 従来の総論Ⅲ、Ⅳ、Ⅴが総論Ⅱ「正常構造と機能、発生、成長、発達、加齢」へ統合
③ 総論Ⅸ「検査」が16%から13%へ減少
④ 総論Ⅶ「治療」13%から16%へ増加

特に治療に関しては、全身管理に注意する疾患が追加されています。中項目として「全身管理に留意すべき疾患・対象」という項目があり、さらに小項目で細かく分類されています。このことから、高齢化社会に基づき、基礎疾患だけでなく、さらに全身の状態まで把握することが重要視されていることが窺えます。ゆえに今後は基礎疾患系の問題がさらに増える傾向にあるのではないかと予測されています。

歯科医学各論の変更点

これまでの各論6項目から5項目へと変更されています。

① 各論Ⅰ…「歯科疾患の予防・管理」が廃止されています。各論Ⅱ~Ⅴまでは大きく変わりませんが、それぞれ1%の割合で増加しています。
② 各論Ⅳ…これまでの「高齢者の歯科診療」という項目が「高齢者等に関連した疾患・病態・予防ならびに歯科診療」と細かく記載されています。また問題数も3.6問ほど、高齢者に関連した問題が増えることになり、さらに高齢化社会に沿った内容へと変更されています。

合格基準についての概要と変更点

従来と比較していくつかの変更点があり、把握しておく必要があります。

① 必修問題…従来と変わらず、絶対基準での評価を継続
② 一般・臨床実地問題…従来と変わらず、歯科医師として具有すべき知識と技能を有しているものを適切に評価する
③ 禁忌肢問題…これまでと異なり、禁忌肢を含む問題は出題されません。患者に対し重大な障害を与える治療や手技、ショック時などの緊急時の誤った対応、法に抵触する行為、倫理に反する行為に関する内容は引き続き出題されます。
④ 必要最低点…従来と異なり、他の合格基準で歯科医師として必要な知識および技能について確保されているとみなされ、今後は適用されない方針です。

超高齢化社会に向けた歯科医療への変革

医療技術がますます向上し、平均寿命が延びていることは今さら言うことでもありません。日本における高齢化社会が更に加速した現在は「超高齢化社会」といった状況です。それに伴い、高齢者の歯科治療のニーズが高まり、訪問診療における口腔内ケアなど、高齢者の健康に対して大変大きな役割を担う時代へと変化しています。

外来患者は勿論、在宅・入院患者を含めた高齢患者への歯科医療のあり方が変わり、口腔機能の回復および維持が大きな目的となります。また後期高齢者健診や歯周疾患健診など、自治体と連携した高齢者の口腔機能の健康に関する各種健診も積極的に行われています。このように、社会全体で高齢者の健康をサポートするなど、社会的にも歯科医療のあり方がより求められる時代になりました。

また高齢者に対する治療の難易度が上がり、リスクも増加することで高齢者の歯科治療の内容も変化が生じています。これまでの抜歯から義歯という一辺倒な治療から、全身の状態から見た治療、ケアが必要となります。

高齢者の罹患率で最も多いのは肺炎であり、歯周病に起因する誤嚥性肺炎などは命を落とす大きな原因となるなど、高齢者の口腔内の治療やケアが高齢患者には必須です。また高齢になるにつれ、高血圧や糖尿病など、何かしら全身疾患が起きてくることを考えると、口腔内だけを診ているわけにはいかず、口腔内と全身疾患の関連性を深く知っておく必要があります。

平成30年度に行われる第111回歯科医師国家試験にはこうした背景から、高齢者に対する歯科治療、全身疾患との関連に関する出題が拡大されているものと思われます。つまり総合的に見ても、これまでの健常者型から高齢者型へと大きく変わることが、第111回歯科医師国家試験の特徴です。

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