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歯科コラム

歯科医院で実施できる院内感染予防について

近年、歯科医院の増加から、診療科目の標榜や取り組み等で差別化を図り取り組んでいる医院が増えています。そこで、歯科医院で実施できる院内感染予防対策をご紹介します。あなたの歯科医院の院内感染予防対策は万全ですか?是非参考にしてみてください。

時代のニーズに合った「院内感染予防」対策を!

時代のニーズに合った「院内感染予防」対策を!

現代社会に求められる歯科での院内感染予防
「虫歯ができたら行く場所」という歯科の時代から、「予防」という意識が向上した現代。患者側も「より安心・安全な歯科医院」「自分に合った歯科医院」を求めており、ネット社会になった現代ではさまざまな情報を見て来院します。「院内感染」についても同様、昔に比べて、患者側は歯科医院を選ぶ上でも重要にしていることのひとつであるといえるでしょう。

現在の院内感染の予防対策は万全か?
器械・器具の滅菌や消毒を全く行っていない歯科医院はないでしょう。しかしどれだけの歯科医院が有効的な方法を取っているでしょうか?開院当初から同じスタイルだという医院も少なくないのでは?これまで信じて取り組んできた滅菌・殺菌を見直してみてくださいね。

歯科での院内感染の実状

歯科での院内感染の実状

歯科で院内感染が起こりやすい?
口腔領域は粘膜も薄く、少し触っただけですぐに傷つき出血しやすい領域です。併せて歯科処置は口腔内を触っただけですぐに「唾液」という体液が付着する場所でもあります。歯科スタッフ側、患者側双方に院内感染の可能性が高い領域である訳です。

なぜ感染しやすいのか
「観血的処置」は感染率を高めます。歯科では処置で出血するリスクが高い分野です。以下、歯科処置に於いて出血を伴う処置をあげてみます。
歯肉が炎症している患者の診査、麻酔、歯の切削、歯髄処置、抜歯、銀歯等の補綴物を入れたとき、歯周ポケット周辺の診査、スケーリング、ブラッシング、フロッシングなど。
ざっと挙げただけでも、これだけ多くの処置があります。歯科は診察の段階で唾液や出血に触れることになりますが、医科ではほとんどありません。だからこそ、歯科での院内感染予防は重要だといえるでしょう。

歯科器具からの感染
そして、歯科といえば、処置にあたり、細かな器具を膨大に使用します。それらすべてを完璧に無菌状態にしておかなければ、感染の可能性はあるという訳です。
素材の違いなどで滅菌方法・消毒方法もさまざま。滅菌時間や消毒液の割合、そして滅菌・殺菌後の保存などがきちんと行われているかも重要です。

一番の感染源は…
歯科処置の中で、一番感染源になるものは何だと思いますか?それは切削器具の「タービンヘッド」です。中で回転する羽に圧縮空気を当てることで回転させる仕組みで、回転が止まる瞬間に水がタービン内に逆流します。「サックバック」とよばれる現象です。これにより、切削時の水だけでなく、口腔内の血液や細菌も侵入。適切な処理をしないまま、次の患者に使用すれば、次に回転開始時に逆流したものが噴出する訳です。治療の際には出血を伴うことが多いため、どうしても感染率は上がってしまいます。


今から実践できる!院内感染予防策

今から実践できる!院内感染予防策

まず術者側が標準予防策を徹底する
患者から術者を介して別の患者へ感染することもそうですが、患者から術者が感染するという危険もあります。患者の血液・体液、分泌・排泄される湿性物質(痰・膿など)、創傷部・粘膜に触れる場合は、感染の恐れがありますので、「手袋・エプロン・マスク・アイシールド」の4点の着用が基本です。また、触れた後は手洗いと消毒をします。まずはしっかりこれらの「標準予防策」を守りましょう。

個々に防護具を準備する
個人の防護具はシングルユース(自分専用)を基本とします。特にグローブは患者ごとに交換するのが基本です。マスクやエプロン、シールドは患者ごとに交換するのは難しいでしょうが、汚れたら交換しましょう。また、付け忘れの無いように可能な限り身近に用意しておくことが重要です。

使用済みの器具の汚染除去
患者に使用した器具類は、確実に滅菌・消毒することが重要だとされています。そのためには「事前に十分な洗浄」を行うことが必須。CDCのガイドラインでも強く勧告されていることです。洗浄が十分でないまま加熱滅菌しても、有機物深層部で病原性の微生物が完全に不活化されないこともあります。また、有機残留物が次の患者の体内で活化してしまうこともあります。ですから確実な汚染除去が求められます。

タービンハンドピースの対処
先に述べたように、タービンは一番院内感染の原因になりやすく、「タービンの滅菌がされていれば、院内感染対策の8割はできている」と言う先生もいるほどです。タービンヘッドはアルコールワッテ等で拭いて次の患者へ使い回すという医院もあります。まず、1人の患者に使用したら滅菌するというのが基本。そして、それだけではなく、使用後は逆流しないタイプのタービンであっても、処置後タービンをコップなどに空まわしして、逆流したものを出してしっかり周りを洗浄。そして滅菌パックに入れて滅菌するという工程の徹底をしましょう。

歯科医院の院内感染防止対策を向上させるには

歯科医院の院内感染防止対策を向上させるには

現在の院内感染対策の実状
院内感染対策には、さまざまな工夫が必要だということがお解りいただけたと思います。しかし現実には、これらに完璧に取り組めている歯科医院はわずか3割程度とされています。日々大量に使用する歯科器具を滅菌・消毒する機械などの設備、沢山の患者一人ひとりに交換する防護具等のコストを考えると、患者一人に対し、約400円位になるとされ、保険診療の場合、赤字覚悟で取り組むことになるからです。

院内感染防止対策促進協議会の取り組み
そこで厚生労働省は、そのような現状を改善すべく「歯科外来診療環境体勢加算」防止対策推進を図っています。本加算点数を算定している医院は診査等が不要。あくまでも自己申告です。しかし、患者が安心して歯科を受診できる要素の一つとするため、第三者機関による審査を受け、合格した歯科医院のみ、別途情報を掲載することになっています。インターネットでも検索できるため、患者が安心安全な歯科を受診したいと思い参考にすることができるのです。


まとめ

医療現場に携わる者として「院内感染予防」は重要なこと。しかしながら完璧にするためにはコストもかかり、難しい現実もあります。しかし昨今、院内感染防止対策促進協議会の発足など、昔に比べて院内感染予防に力を入れる歯科医院へ明るい光が差し始めています。患者のため、敷いてはわが身を守るためにも現状を振り返り、院内感染予防を考えてみてはいかがでしょうか。

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