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歯科コラム

患者の歯の磨き残しを阻止しよう!自宅でもできる磨き残し対策

歯磨きの磨き残しは、多くの口腔内トラブルの原因となりえるものです。今回は、そんな磨き残しを引き起こしがちな自宅での口腔ケアに対する、対策方法について解説します。

なぜ歯垢を磨き残してしまうのか

なぜ歯垢を磨き残してしまうのか

歯磨きは、誰もが生活の一部として習慣になっていることでしょう。だからこそ自己流の磨き方が歯垢の磨き残しを招き、その積み重ねが結果としてカリエスや歯周疾患を進行させているケースが多くみられます。

自分の歯が何本あるのか、またどのような形態をして、どこにプラークが付着しやすいのかを把握していないケースが非常に多いというのが現実です。さらには、歯周疾患であることを自覚していない患者も少なくありません。このような状態では、どんなにTBI(歯磨き指導)をしても磨き残し対策には繋がらず、患者側もピンとこないかもしれません。

まずは、正しく磨かれた口腔内がどれほど気持ちの良いものか、実感してもらうことでモチベーションを上げていくことが重要なポイントだと考えます。自分の歯周組織に関心を持つきっかけとなり、自らプラークコントロールを徹底していくかもしれません。

さらには喫煙や飲酒など、生活習慣にも目を向けて改善へと繋がっていくことも少なくないのです。

患者のモチベーションを高めて磨き残し対策に繋げる

患者のモチベーションを高めて磨き残し対策に繋げる

普段の口腔内ケアは、患者自身が行うもの。そのため、患者のモチベーションを高めていかに磨き残しへの危機意識を持ってもらうかが大切です。

■患者に寄り添ったTBIを
患者の口腔内を覗けば、カリエスや歯周病の有無はもちろん、その人の磨き癖や性格、ストレスの状態などを読み解くことができる。このようなことが、主にTBIを行う歯科衛生士には必要な技量のひとつだと言えます。一方的でマニュアル通りの指導では、患者との信頼関係は築けません。その上、歯磨きは複雑で面倒なものだという印象を与えてしまう恐れがあり、やる気を失ってしまう可能性もあるでしょう。

TBIは、患者と二人三脚で進めていくものです。そのため、患者とのコミュニケーションの中で情報を得て、患者自ら歯磨きに関心を持つように導くことが歯科衛生士の役割でもあります。

■患者のライフスタイルを考える
患者のライフスタイルを知ることは、磨き残しを阻止する際に大きなポイントとなります。間食や夜食が多いような食生活に問題がある患者だけではなく、仕事など外的要因が絡むケースも珍しくない現代。調理師のような食に関する職業に就く人、食後の歯磨きに時間が取れない、生活のリズムが不規則、ストレスフルな環境など、患者の数だけ注目すべき問題点があります。

カリエスのできやすい環境や、全身疾患による歯周病の悪化などを踏まえて、どのように伝えるべきかの方針を個々に立てる必要があります。
     
■PMTCで爽快感を体験させる
磨き残し対策として、歯科医院で行うPMTC(専門家による機械を使った歯面清掃)は患者にとって特別な爽快感を得ることができ、その体験はモチベーションを高めます。

特に喫煙者は、ヤニがきれいに落とされた瞬間、粗造だった歯面が滑沢になり、本来の歯の白さに驚く患者も多いです。これがきっかけで禁煙に成功したという症例も少なくありません。この爽快感を自分でも保つため、正しい磨き方を習得したいと意欲的になる患者も多く、歯周組織への関心にも繋がっていきます。

■視覚に訴える
患者に直接、歯頸部や歯間に付着したプラークを見せ、どこにどの程度の汚れが残っているのかを実感してもらうことも重要です。さらに、採取したプラークに潜む細菌を位相差顕微鏡でチェックすることで、患者にとってもリアルに細菌の動きを観察することができ、歯磨きに対する意識が高まることも期待できます。


徹底したプラークコントロールを自宅で

徹底したプラークコントロールを自宅で

自宅で行われる患者自身による歯磨きを徹底してもらうには、ただ「歯磨きの重要さ」を口頭説明するだけでは不十分です。視覚的な現状の認識と、適切な用具の選び方なども解説すると効果的です。

■歯垢染色剤を使用したTBI
染色剤を使用することにより、患者自身の磨き残したプラークが一目瞭然なため、歯磨きに対する意識も高まっていくでしょう。これを繰り返すことにより、どの部位が磨きにくく、また残りやすいのかを自覚していきます。自宅でも、患者に歯垢染色剤による磨き残しのチェックをすすめ、毛先の当て方やブラッシング圧を確認しながら指導してみてください。プラークの磨き残し部位が患者の記憶にも残りやすく、磨き残しは格段に減少するでしょう。

■歯ブラシの選び方
歯ブラシの形状にはいろいろありますが、歯周組織に問題がない場合、毛先の揃った小さめのヘッドでシンプルなものが適しています。歯ブラシは毛先が当たりやすく小回りの効くものが効果的で、患者も迷わず選択しやすいでしょう。歯ブラシのかたさも、歯周疾患の有無によって選択しますが、通常は「ふつう」でブラッシング圧を調節しながら磨くよう指導します。一生懸命に磨こうとする真面目な患者ほど、歯肉退縮に繋がったり知覚過敏を引き起こしたり、かえって悪化させてしまう恐れがあるために細心の注意を払って指導する必要があります。

■補助的清掃用具の使い方
デンタルフロスや歯間ブラシを通すことでプラークの付着が確認できたら、口臭のチェックをさせると今後の歯磨きへのモチベーションへと繋がることもあります。人は自分の口臭を常に気にしているものです。口臭の主な原因はプラークですから、そこで正しい歯磨き方法を習得したくなるはずです。

■効果的なブラッシング方法
歯周組織に問題がない場合はスクラビング法での指導が一般的で、患者にとっても比較的磨きやすいブラッシング方法でしょう。その反面、ストロークが大きくなってしまったり、圧が強くなってしまったり、毛先が押しつぶされて広がってしまえば、正しいスクラビング法とは言えません。患者には、これらの点を自覚してもらうよう導くことが歯科医師、歯科衛生士の役割と言えます。

歯磨き後に、歯面や歯頸部などを舌先でチェックする習慣も、磨き残しのセルフチェックとして使える方法です。プラークやヤニの沈着している部位は粗造で違和感がありますから、歯科医院にてPMTC後、清潔な状態との違いを知ることは磨き残し対策として有効的です。

■歯磨き粉の選択
虫歯や歯周病予防の歯磨き粉を使用することもひとつの方法ではありますが、一長一短とも言えます。歯磨き粉による爽快感が正しくプラークコントロールされたと勘違いしてしまうケースもあり、かえって妨げになることもあると認識する必要があるでしょう。

歯磨き粉がプラークを落とすと理解している患者は意外と多く、毛先を意識せずに磨くことが磨き残しの原因に繋がっていきます。歯磨き粉やフッ素は、きれいになった歯面に使うからこそ、その成分が効果を発揮するわけですから、まずは正しい磨き方でプラークを除去しましょう。


患者が磨きやすい口腔環境を作る

患者が磨きやすい口腔環境を作る

プラークの磨き残しは、歯列不正や歯周組織の形態が磨きにくい環境を招くなど原因は様々あります。それらは根気強くTBIをすることで患者自身が自分の磨き癖に気付き、磨くコツを少しずつ習得していくことで改善されるでしょう。

問題なのは、不適合な補綴物が装着されているケースや、誤ったSRPによって必要以上にセメント質が削り取られ、骨の再生を妨げたり歯肉退縮によって知覚過敏を引き起こしたりすることで、磨きにくい環境を作ってしまうことにあります。

対策としては、歯科医師や歯科衛生士の技術向上が重要です。歯科医院にて受けるTBIやPMTCは、患者にとって歯の健康を考えるきっかけになっているということを忘れずにしたいものです。

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