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歯科コラム

歯科医院の保険での治療は患者様のためになるか?利点と欠点

日本は国民皆保険制度のため、保険料を支払えばすべての患者が保険証を使い、一部の治療費を負担するのみで数々の治療を受けることができます。これは海外からも高い評価を受けている保険制度であり、誰もが保険制度を受けられる国は世界中でも限られています。

かのアメリカは健康保険と歯科保険が存在しますが、どれも任意で加入するものであり、それ以外は基本的に歯の治療などは自己負担となっています。それを考えるといかに日本人が恵まれているかがわかりますが、しかしこの保険制度には隠れたデメリットも存在しているのです。今回はこの保険制度を利用して治療を受けることのメリットとデメリットについて詳しくご紹介させていただきます。

保険制度のメリットとデメリット

保険制度のメリットとデメリット

保険制度の非常に良い点は、保険料を支払っていれば誰でも保険制度を利用してごく僅かな治療費のみを支払うだけで治療が受けられることです。

■保険制度によるメリット
現在の年齢層における負担割合は、7歳未満の未就学児までの子供は2割負担。6歳以上の就学時の子供から69歳までの成人は3割負担。70歳から74歳までは2割負担。75歳以上からは1割負担と、このように割り当てられています。さらに一部の自治体では子供の医療費を助成する制度を取り入れているところがあり、最大で高校を卒業する18歳までの子供の助成をしているところなどもあります。このように今の日本が抱えている問題を考慮した自治体が登場してきていることにより、多くの患者が安心して治療を受けられるように保険制度は変わってきているのです。

もうひとつのメリットは、保険制度を利用して受けられる治療が非常に幅広いことです。基本的に保険制度によって受けられる治療は、虫歯と歯周病の治療、抜歯の治療、クラウンやブリッジを作る治療、義歯を作る治療などです。

保険制度は少しずつ変化をしていきます。それにより2013年は白い被せ物を作ることができるのは前歯3本まででしたが、2014年にはさらに奥の小臼歯2本も白い被せ物を作ることができるようになりました。このように状況によって変化を遂げ、また幅広い症例を網羅していることによりあらゆる治療に保険を適用できることが高く評価されています。

■保険制度のデメリット
では、この保険制度にどのようなデメリットが潜んでいるのでしょうか? まずそのひとつは『予防』に対する治療は保険制度を利用できないことです。今となってはあらゆる医療先進国が『予防』を中心とした治療を無料で受けられるような時代です。しかし日本では『治療』を中心とした医療体制のために『予防』による保険適用はいまだに認められていません。そのため歯石を除去するスケーリングなどのクリーニングは、歯周病の治療として行うことで保険制度を利用することができます。歯周病を予防する目的で行われるクリーニングは、保険制度が利用できません。

また、矯正治療も同様です。不正な歯並びにより虫歯や歯周病のリスクが高くなってしまうといった理由から矯正治療を保険制度で行うことは認められていません。その理由は予防を目的とした矯正治療やクリーニングは歯を美しく保つために行われる『審美治療』とも捉えられているからです。

クラウンやブリッジを作る上でも、『審美治療』と捉えられるものがあります。それは上顎と下顎の左右を合わせた大臼歯に白い被せ物を作ることです。というのも、大臼歯は食べ物を噛み砕く役割を担っている上でとても強い咬合の圧力がかかる場所。そのため強い力をかけると破損するリスクがある白い被せ物を作ることはあまり合理的とはいえません。そういったことからどんなに圧力をかけても破損することのない銀合金(金銀パラジウム合金)の被せ物、いわゆる銀歯が保険適用に相応しいといえるのです。

しかし、近年金属アレルギーを持つ患者が増えてきており、この銀歯を入れることでさまざまな身体的トラブルが出てしまう患者がいることも事実です。それでもいまだに金属アレルギーが認められている患者への銀歯以外の被せ物を作ることは、保険制度では認められていません。

大臼歯を2本とも喪失してしまった場合は、保険制度では義歯の作製が認められています。ところが義歯ではうまく食事ができない、言葉が発音しづらくなるといった義歯に順応できない患者も少なくありません。そのような場合はインプラントを作るしか残された方法はありませんが、このインプラントも保険制度の適用は認められていません。インプラントの治療は特殊で高度な技術が求められるため、治療を行える歯科医師が限られてしまうデメリットがあるほか、費用がとても高いからです。

このように保険制度が認められている治療と比較すると、病気の治療ではなく、審美性があり、品質が高く最先端の治療と呼ばれているものは保険制度から外されてしまうのです。

歯科医師のジレンマ

歯科医師のジレンマ

この保険制度の状況に頭を悩ませている医師も少なくありません。保険制度の範囲内で十分な治療できる患者は、ある程度の限りができてしまうことに気づいてきているからです。

より品質の高い治療や安全で高度な技術を求める患者は、時代の流れとともに少しずつ増えてきています。そういった患者の希望に応えるためには、保険制度の適用が認められていない自費治療で対応していくしかないのです。

保険制度で認められた治療には、必ず点数というものがあります。この点数を10倍にしたものが治療にかかる費用の額になり、この費用の一部が患者の負担する費用となります。この点数により医師が市町村や国、そして社会保険などに請求できる額はある程度決まっており、その治療を丁寧に行っても点数以上の額は請求できません。そのため治療に時間をかけていると多くの患者が治療できず、医師としても報酬面に不安が出てきます。十分な人員や設備も用意しにくく、多くの患者を治療するためには十分な治療ができなくなってしまいます。こういった医師のジレンマが現在も続いているのです。

まとめ

まとめ

時代の変化とともに患者の意識も高まってきているため、歯科医師に求める治療もそれぞれ変わってきています。それに応えていくためには保険制度がまだまだ追いつくことができず、それにより保険制度に不満を抱えている患者もでてきています。

一方で現在の保険制度があまり変わらずに続いてきていることに恩恵を感じる患者もいるため、保険制度を変えるべきかという問題は決して小さなものではありません。日本が今後、保険制度とどのように向き合っていくのかは非常に注目すべきポイントです。

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