歯科医院内で実施できる増患対策
現在の国内の歯科医院の数は、コンビニエンスストアよりも多いということはご存知でしょうか。それは言うなれば、歯科医院が患者側に選ばれている時代となっているのです。そのため、保険診療だけでは患者の目に留まらないと考えた多くの医院が、他にはない独自の治療技術やサービスがあることを提示し、高度かつ良質な治療ができることをアピールしました。しかし、治療の技術や質だけでは患者は十分に満足してはくれません。患者は少なからず治療に対する不安や緊張をいだいているために、その歯科医院への安心感や信頼感を求めてもいるのです。そのため、高度な治療ができるからといって患者に対する親切心や同調を欠いてしまうと、患者からの信頼が失われ、やがてその心は離れていってしまいます。では、患者が安心でき、患者から信頼される歯科医院を作るためにはどうすればいいのか。ここでは、実際の医療現場において考えられている患者への応対などによる増患対策についてご紹介します。
歯科医院の評価は治療の技術よりも応対で決まる
患者が安心して治療を受けられ、かつ患者に信頼される歯科医院作りをはじめるためには、まずスタッフの応対や医院内の意識改善が必要です。その理由は、患者は自分の歯を治療してもらおうと歯科医院を探す際、数ある歯科医院の中で最も注目するポイントがその医院のサービスだからです。患者が安心して治療を受けるためには、歯科医師や衛生士の高度な技術による安全で痛みのない治療も大切ですが、大半の患者はその歯科医院の技術の高さをあまり参考にしていません。というのも、その治療がいかに最先端で高度かつ安全であっても患者はそれをあまり理解できず、またそれを実感することができないからです。また、その治療の技術が確かなのかどうかは、実際に治療を受けてみなくてはわかりません。治療を受ける前になると、多くの患者が少なからず不安と緊張を覚えるものです。それを緩和するのがスタッフの応対とサービスなのです。どんなに安全で痛みがないと謳われても、治療を受ける側のストレスや不安、緊張などを理解してもらえないと、患者は治療を受け入れようとしません。しかし、スタッフの応対やサービスによって不安や緊張が和らぐと、患者は初めてその歯科医院が信頼できるようになってきます。そこで初めて治療を受け入れることができ、治療の技術の高さも評価してもらえるのです。
スタッフの意識改善
患者が安心して治療を受けられるような応対やサービス提供ができるようになるためには、まず歯科医院内におけるスタッフの意識改善が必要になります。患者が安心し満足できる診療方針を定め、それをスタッフにしっかり浸透させましょう。そのためには定期的なミーティングを行い、スタッフ全員が診療方針を理解し診療にあたっているかを確認するようにしましょう。しかし、ここで勘違いをしてはいけないのが、患者のためにスタッフを犠牲にするというような考え方をすることです。スタッフの応対とサービスがあってこそ診療方針であり、理想とした歯科医院が作られていくことを理解させ、スタッフのやる気と充実感を高めることが大切です。そのためにはスタッフの教育をしっかり行うことも大切ですが、ひとりひとりのやる気を高めるために特別なことも必要です。例えば患者にアンケートを実施し、医院内のスタッフの評価をしてもらうことにより、スタッフのモチベーションを高めていく方法などです。またスタッフの誕生日会を開いたり、レクリエーションを行ったりすることもいいでしょう。そうしてスタッフが育っていくことにより、自然と結果も伴っていきます。
コミュニケーション能力の育成
患者への応対やサービス提供のためにはコミュニケーション能力が欠かせません。ではコミュニケーション能力はどのように培うのか。ひとつは「話す力」を育てることです。「話す力」は実際に話すこと以外に育てる方法はないため、毎日スタッフひとりひとりにスピーチをしてもらうといったように積極的に話す場を設けることが必要です。またコミュニケーションには「話す力」のほかに「表情」も大切です。患者にとって安心できる上に信頼もできる表情であるのが「笑顔」です。またその「笑顔」もその場ですぐにできるものではないため、練習が必要になります。笑顔を作る時の参考として、口を「イ」と発音する時の形にすることで自然と口角があがります。これを元に笑顔作りの練習をし、スタッフ同士で表情ができているか確認をしあうようにしましょう。また実際に患者に応対することを想定した、模擬患者による試験を行うこともいいでしょう。そうしてコミュニケーション能力を育てていくことで、患者に治療の説明をする時や患者のクレームに対応する時などに患者も自然と笑顔になるような応対が身についていきます。
患者との出来事を報告する
患者の応対時に起きたエピソードは、他のスタッフが患者の応対をする時の参考になることがあります。そのため、患者とのやり取りで印象的だった出来事はノートに記すなどして記録を残し、スタッフ同士の報告会などで発表するようにしましょう。またその時のエピソードを簡略的かつ具体的に記録することも大切です。「いつ」「どこで」「誰に(誰が)」「何をした(何があった)」といった手順でまとめると説明がしやすい上に、聞き手もエピソードを聞きながらその時の状況を想像することができます。またエピソードは応対の際のトラブルだけでなく、患者から評価されたことや指摘されたことなどあらゆることを記録しましょう。そうすることで、さまざまな状況での応対マニュアルを作ることができ、新しいスタッフを教育する時に役立てることができます。また患者からの積極的な感想や意見が欲しいという場合は、歯科医院側から応対やサービス向上のために患者の声を求めていることを提示し、協力を仰ぐといったことをするといいでしょう。
増患対策は目的ではなく結果である
患者が増えて欲しいという目的のためにスタッフの応対やサービスを向上させようとしても、本当の意味で増患の効果は得られません。患者から信頼され、患者が安心して治療ができる歯科医院を作り上げることで初めて増患につながっていくのです。まずは患者が通いたくなる歯科医院とはどのようなものか、を考えることから始めていくといいでしょう。