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歯科コラム

ネットの間違った情報による酸蝕症患者が増加|歯科医院でできる注意喚起

虫歯が原因ではないのに歯が溶けてしまう症状を「酸蝕症」と言います。この酸蝕症が最近急増していると同時に、昨今の健康志向ブームも加わり、インターネットなどを通じて間違った情報が流れていることがあります。最近は、まとめサイトなどのネット情報が氾濫しており、知りたい情報をすぐに調べることができる反面、誤った情報を目にし、それを模倣してしまう可能性が高くあります。それにより、患者自身が間違った対処をしてしまうことで、かえって症状が悪化する危険性が出てきます。正しい情報を伝えるために、歯科医院はどのように注意喚起をすればよいのでしょうか。

虫歯と酸蝕症の違い

虫歯と酸蝕症の違い

虫歯と酸蝕症は、どちらも歯が溶けてしまう症状が特徴です。しかし、同じような症状でも、虫歯と酸蝕症は原因が全く違います。虫歯はプラークと呼ばれる歯垢の中にいる虫歯菌が糖分を栄養にして「酸」を作り出し、その酸によって歯が溶ける症状です。それに対し酸蝕症は、口の外から入ってくる酸や身体の中からの酸(胃液)によって歯がすり減ったり、溶けてしまうような症状です。このように虫歯ではないのに歯が溶けることを「酸蝕症」と言います。

酸蝕症の急増とその原因

酸蝕症の急増とその原因

虫歯と同様、酸蝕症は「生活習慣病」とも言われています。現代の食生活が、酸蝕症になりやすい口内環境を作り出してしまうからです。そして、それ以外に患者がネットなどで間違った情報を鵜呑みにしてしまい、酸蝕症になってしまうというケースが増えてきています。

歯のエナメル質が溶けてしまう原因は体外から入ってくる酸と、体内から出る酸です。体外からは食べ物や薬品によるもので、主にスポーツドリンクなどの清涼飲料水、柑橘類、酒類、酢やビタミンC内服薬、また職業により酸を吸ってしまうなどが原因です。内側からは胃酸の影響で、拒食症による反復性嘔吐や過食症による摂食障害、胃酸の逆流などが原因として挙げられます。そして食品などの酸性、アルカリ性をあらわす単位をpH(ペーハー)と言いますが、pH数値が大きくなるほどアルカリ性が強く、小さくなるほど酸性が強くなります。ビタミンC含有量が多いことで知られているレモンはpH1.5、玄米茶はpH7です。この2つを比較してpH数値が低いレモンのほうが、酸性が強いということになります。そしてそれだけ強い酸を日常的に口にすることで、酸蝕症になりやすくなってしまいます。


誤った酸蝕症の認識

誤った酸蝕症の認識

例えば飲料ですが、炭酸飲料は酸性度が強く、砂糖が含まれていないタイプでも、摂取の仕方によっては歯が溶けてしまう恐れがあります。また、スポーツドリンクは運動などで多量の汗をかいたとき、熱、下痢などの水分補給時によく飲まれますが、多量摂取は歯のエナメル質を溶かしてしまうほどの酸を摂ってしまうことになります。だらだらとゆっくり摂取しないなどの注意が必要です。また、ワインが虫歯予防になるとネットで見かけることがあります。ですが、赤ワインはpH3、白ワインはpH2.5と酸性が強く、飲みすぎると酸蝕症になる恐れがあります。こちらも曖昧な情報により、かえって歯の疾患に繋がってしまうことがあるので、ネットの情報を鵜呑みにしないことが大切です。

果物や野菜も体には非常に良いのですが、摂取の仕方によっては酸蝕症になる可能性が高くなります。美容関連でビタミンCが美白や抗酸化作用に効果があるとよく聞きますが、歯に関してはそれが当てはまらないのが事実です。とあるケースでは、スライスしたレモンを上唇と歯の間に挟み、ジョギングをするとホワイトニング効果があるとネットで見た方が実践したところ、レモンに含まれる強い酸によりエナメル質が溶け出し、やがて象牙質まで露出してしまったそうです。ネットで見かけ、歯を白くする効果を期待して行なった結果、このような結果になってしまいました。同様に、レモンのすりおろしで歯を磨くことも歯が溶けてしまう恐れがあり非常に危険です。なお、歯科医院で行われるホワイトニングは過酸化水素水などが使われており、酸は使用していないため、歯が溶ける心配はいりません。

意外に知られていませんが、有名なうがい薬も、実は酸性度が高く、常用すると酸蝕症になる可能性があります。一部ネットで「うがい薬は歯周病予防に効果がある」と言われていますが、それだけで歯周病を予防できるとは言い切れないでしょう。歯周病を予防するにはやはりプラークコントロールです。あるうがい薬のpHは2~2.5で、コーラとほぼ変わらない酸性度です。口の中の殺菌、消毒作用として効果は高いですが、歯と歯の間にうがい薬が残ってしまい、着色だけでなく強い酸のために歯が溶けてしまうことがあるのです。抜歯後の消毒や風邪気味でのどの調子が悪い時など、症状に応じて使うことは効果的ですが、日常的に使用するのは避けたほうが賢明と言えるでしょう。


歯科医院でできる患者への注意喚起

歯科医院でできる患者への注意喚起

歯科医院が日常のセルフケアを説明することで、患者の酸蝕症に対する正しい知識習得とともに間違った情報を取り入れる防止策に繋がります。酸性の強い飲食物を摂取したあとは水で口をすすぎ、お茶や牛乳など、中性に近い飲料などを摂取し、口の中の酸を中和させること、また歯磨きは、酸でエナメル質が削れやすい状態になっているため、食後30分ほど経ってから行なうことが酸蝕症予防になります。また、唾液は酸を中和してくれる作用があるため、唾液を分泌しやすいよう日頃からよく噛んで食べること、デンタルガムなどを噛むことなども効果的です。歯科医院からこういった指導を受けることで、患者はネットから得る情報を容易に取り入れなくなるでしょう。


まとめ

このようにネットでの間違った情報は、取り返しのつかない結果となってしまうことがあります。歯科医院は症例などをあげながら、正しい情報を伝えることで注意喚起を図ることが大切です。飲食物の酸性一覧表などを患者に渡す、あるいはホームページやブログなどに載せて伝えると、既存患者はもちろん、ネットを見る人も正しい情報を得ることができ、酸蝕症に対する意識が高まることが期待できます。

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