治療妨害をする患者様の対応は?歯科医師が困る患者様との関わり方
歯科医師が感じる治療妨害 「こんな患者は嫌だ」
■何度も同じ質問をする患者
歯科医院では最初に診察をおこない、患者の治療計画を説明し同意を得てから治療に入ります。しかし最初に十分な説明をしているのにも関わらず、治療に関してや使用する器具などについて何度も同じ質問をされる患者もいます。不安が原因のことが多いので、億劫に思わずに回答するようにしましょう。ただし、同じ治療の説明の場合は簡潔に行うのがポイントです。治療時間を長く掛け過ぎて、予約が押さないように時間の管理を心掛けましょう。
■診査・診断を受け入れてくれない患者
不具合の原因を自身で思い込んで来院し、診断結果と自分の予想にズレがあると受け入れてくれない患者がいます。最近はインターネットでさまざまな情報を入手することができるため、あらかじめ症状などから検索して思い込んでしまう患者が増えているのかもしれません。治療がなかなか進まなかったり、本来の原因を改善できないまま終了しなければならないといった弊害が起こる可能性もあります。まずは、相手の意見を十分に聞いて信用を勝ち取る事が重要となります。
■インターネットの口コミサイトに誹謗中傷する患者
最近は医療系の口コミサイトもたくさんあり、来院した患者により口コミが記載されてランキングされるようなサイトも増えています。来院した際には何事もなく治療が終了したにも関わらず、その後サイトにその歯科医院の悪評を記載する患者がいます。来院時にその場で質問して貰えていれば解決できたような内容であっても、サイトに悪い評価として記載されてしまうと修正は難しく、口コミを見て歯科医院を探している新規の患者にとっては足が遠のく理由になってしまいます。
治療妨害だと感じる患者が増えている背景にあるもの
■メディアによる過剰な報道の影響
昨今、メディアによる過剰な取り上げ方などにより、「患者が黙っているのは損」というような風潮が報道されたりすることもあります。また、個人情報保護法の報道などにより、患者が記載する問診表などの内容も未記入の場所などがあり困るというようなこともあります。
■歯科医院数の増加
近年、歯科医院はコンビニの数よりも多くなり、患者側が選択できる立場にあるということを意識するようになった傾向にあります。これまでは歯科医師に言いにくいと思っていたことも言いやすい環境になったといえるでしょう。
■インターネットの普及
今や国民の8割以上が何らかの形で利用しているというデータがあるほど、インターネットは便利で身近なものとなっています。しかしその便利さゆえ、クレームがあっても表面化せずに転院し、誰が書き込んだかわからないまま表現できる「口コミサイト」などを通じて不満を晴らすという患者もいます。
■安全・安心への意識が向上
これもメディアが普及したことが関わりますが、昨今医療業界において大きな問題が報道されています。たとえば産業廃棄物の不法投棄や病院内での院内感染死亡例、また歯科ではインプラントの使い回し、麻酔のショックによる死亡例などが取り挙げられ、医療業界に対する不安感が大きくなった傾向があります。
どう関わる? 治療妨害だと感じる患者との接し方
■患者の不安・不満に寄り添える誠意を示す
まず、どの患者も同じく感じるであろう歯科医院への欲求を整理しましょう。基本的に「待ち時間は短く」「治療期間はできるだけ短く」「痛くない治療」「原因を明確に」「治療方法や治療期間を明確に知りたい」というような願望があります。これらに個々の事情によって欲求は追加されます。これらを読み取り・理解し・説明と対策を講じるという姿勢が現れる誠意ある対応を心掛けましょう。
■患者の意図を知るためにはコミュニケーション能力が重要
患者の治療妨害を予防するためには、個々に寄り添った対応により信頼関係を築くことが一番重要です。言葉遣い、話し方聞き方などの言語コミュニケーションだけでなく、態度や笑顔、身だしなみや同調表現などの非言語コミュニケーションもトレーニングし、歯科医院全体でコミュニケーション能力の向上を図りましょう。
■対応力向上のための勉強とシミュレーション
患者からの治療妨害事案をそのままにしておくのではなく、歯科医院運営に対しての貴重な意見であるとプラスに捉えましょう。うやむやにしてしまわずにスタッフ全体で情報を共有するためにミーティングを開いたり、セミナーや研修会へ積極的に参加して対応力の向上をおこなうのもよいでしょう。
解決策を検討しロールプレイングすることで、次に同じような患者の対応にあった場合、スムーズな対応が治療妨害の予防にも活きてくると思われます。
■悪質なクレームであるかどうかを見極める
クレームは本来歯科医院運営や質の向上に役立てることのできるものです。しかし威圧的な態度でクレームをつけたり、悪質な誹謗中傷を流布したりする患者の場合には、元来このような行動に罪悪感を持たない性格の患者である場合が考えられます。すべてをプラスに活かせる訳ではなく、きっぱりと関係を絶つという選択肢も持つようにしましょう。そのためにはしっかりとクレーム内容の見極めができるようにしたいものです。