子供を持つ女性歯科医の仕事への影響は?離職の平均年齢とその理由
昨今、「働くママ」は珍しいことではありません。歯科業界においても、女性歯科医数が年々増加しており、女性歯科医の特性を活かして活躍できる分野も多くなってきています。しかし責任ある職種なだけに、子育てしながら常勤することで無理がたたってしまうことはないのでしょうか。女性歯科医の離職の平均年齢とその理由や現状を考察し、現代の女性歯科医がどう働いていけばよいのか考えてみましょう。
子供を持つ女性歯科医の仕事への影響を考える
■女性歯科医の離職年齢
平成28年2月に行われた、厚生労働省調査「女性歯科医師の活躍のための環境整備等に関する調査報告」によると、女性歯科医の離職年齢で最も多かったのは30代でした。離職は子供がいる人のほうが多く、子供なしの人が6.9%に対し、子供ありの人は62.6%という高い割合。このデータから子供がいる女性歯科医の6割強は、一旦職を離れることがわかります。
■女性歯科医の離職期間
女性歯科医が離職している期間は、子供なしの平均期間が2.26年。子供ありの平均期間は1.61年と、子供ありのほうが期間が短く、子育てが落ち着いたら復職する人が多いことが推察されます。また離職期間において、常勤は1.38年、非常勤で1.88年と、若干常勤の女性歯科医のほうが早く復帰しているのがわかります。
■復帰する女性歯科医の子どもの人数と年齢は?
子供の人数は、8割以上の女性歯科医が1人、または2人でした。年齢区分では3歳未満の子供である人が半数以上でした。「3~5歳」が最も多く、次に「1~2歳」、続いて「6歳以上」の順。やはり、保育園に預けやすい時期からの復帰が多いことがうかがえます。
■女性歯科医は出産がターニングポイント
離職年齢と離職期間、子供の人数や年齢から考察すると、女性歯科医が離職する理由は「結婚・出産」が一番多いものと思われます。しかし、常勤であればなるべく早く現場に復帰しなければばらない状況にあるようで、出産を機に子育てに専念したい場合は、職場を退職する。または子供を預けることができる状況であれば復帰する。というように、出産後にどうするのか悩む人も多いでしょう。
子供を持つ女性歯科医は子育てしながら働ける?
■医師の中でも「歯科医師」は働きやすい?
では、「歯科医師」という職業は、女性にとって子育てしながら働きやすい職種なのでしょうか。歯科医師は他分野の医師とは違い、当直勤務や時間外勤務があまり多くありません。そこで結婚・出産後も続けやすい職業だと思われます。実際、産後に復職する女性歯科医は多く、開業医として活躍する女性歯科医もいるくらいです。
■歯科医師としての「責任」も加味しなくてはならない
ただし、制約が全くないわけではありません。もちろん歯科医師としての責任のある業務はこなさなくてはなりませんから、残業して患者の治療計画など、カルテの管理などもしなければならないこともあるでしょう。また、診療だけでなく定期的な勉強会や学会、研修会などへの参加が必要な場合もあります。その際、子供の預け先などは頭を悩ませることになるでしょう。
■起こり得る「状況の変化」が増える
独身時代には起こらなかったこととして、結婚、子育てしながらの勤務では「急な状況の変化」が増えます。たとえば夫の転勤、家族(親)の介護をしなければならなくなった、急な家族のケガなどでの入院です。これらの場合、妻であり母親である以上、勤務体制を考慮してもらわなければならなくなることが必然で、職場の理解を得る必要があります。
■子育てしながら働くには周囲の協力が必要!
結婚後に常勤スタッフとして復帰するのであれば、歯科医師としての立場に理解のある「家族の協力」は必須です。また、職場スタッフの理解と協力も確認しておく必要があります。たとえば子供の急な病気などで職場を休むことになった場合など、このような状況の場合は、どうするのかというシミュレーションを立てておかなければなりません。それが職場や患者へ迷惑をかけないようにするための配慮でもあるからです。
子供を持つ女性歯科医の働き方
■細く長くキャリアを続けることも大切
人それぞれに考え方が違うように、子育てに関しても正解や間違いはありません。子育てに専念するために離職するというのもよいでしょう。ただ、もし歯科医師として長く勤めたいと考えている人は、非常勤やパートの少ないシフトでも「現場を離れる時期を作らない」ことをおすすめします。
■パート勤務やシフト制導入の歯科医院に勤務
子育てを優先したいと考える女性歯科医が働きやすいよう、「曜日限定」というようなパート形式であったり、「午前中のみ」「午後のみ」というようにシフト制で交代できるシステムをとっている歯科医院もあります。出産後も歯科医師を続けたい、子育てと仕事を両立させたいという人は、家庭の負担にならない程度で働くというのもよいのではないでしょうか。
■完璧にこなそうと思わない
子育てにはそれぞれの時期に苦労があり、悩み、子供が自立するまでは心配事は絶えないものです。どこかで見切りをつけて復職するのであれば、100%完璧に家事も育児もこなそうと思わないことが自身のためにも、職場にとっても大切です。歯科医師の勤務時間は、他の医師に比べるとほぼ一定です。そこで、インターネットを使って買い物の時間を節約したり、調理家電を使う、家事の一部を人に任せるといった方法や、家が近所であれば一旦帰宅して夕食の支度をするなど、隙間時間の有効活用など工夫もひとつの方法です。
まとめ
女性歯科医の離職はやはり結婚・出産が一番の理由であり、本来なら一番現役で活躍できる30代女性歯科医のターニングポイントとなると思われます。母親として子供をもつということは、この上ない幸せでありながら、歯科医師としての経験を考えると長期離職できないという状況にあるようです。これからの歯科業界は、活躍の場も多い女性歯科医が安心して働くことのできる職場環境と、子育てしながら働くことへのサポートを考えていかなくてはならないのではないでしょうか。