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歯科コラム

女性ならではの視点を生かす|マタニティ歯科とは

近年、新たに「マタニティ歯科」を掲げる歯科医院が増えています。

妊娠した女性の歯科治療や口腔衛生管理は、これまでも一般歯科をはじめとした多くの歯科医院で行われていました。そこをあえて妊婦の方に限定にする「マタニティ歯科」を設けることは、予防歯科の観点おいても新たなメリットをもたらします。

またマタニティ歯科では妊娠にまつわる様々な悩みを抱えた女性に対応するべく、同性である女性歯科医師の活躍が今後ますます期待されることでしょう。

そこで今回はマタニティ歯科が担う役割やそこで求められているもの、さらにマタニティ歯科で女性歯科医師が期待される理由などについてご紹介したいと思います。

マタニティ歯科が目指すもの

マタニティ歯科が目指すもの

妊娠という女性特有の体の変化に対応しながら、歯科疾患の治療および予防を行うのがマタニティ歯科の大きな役割の1つです。しかしマタニティ歯科が目指すものは、単に妊婦の方の口腔管理だけにとどまりません。

ここではマタニティ歯科の役割について詳しく解説していきます。

■妊娠中の歯科治療および予防管理
妊娠によるホルモンバランスの移り変わりは、女性の体の状態を劇的に変化させます。それは口腔内においても例外ではありません。

例えば妊娠時に急激に増加する女性ホルモンのエストロゲンは、P.intermedia(プレボテラ・インターメディア)の発育を促進し、妊娠性歯肉炎を引き起こすことはよく知られています。また同じく妊娠時に増加する女性ホルモンのプロゲステロンは炎症反応を誘発するプロスタグランジンを刺激するため、歯肉の炎症を増悪させるリスクを高めます。

また妊娠中に歯周病を罹患することは、口腔内だけの問題ではありません。近年は歯周病が全身に及ぼす様々な影響が明らかになっており、特に妊娠中においては早産のリスクを高める危険性が示唆されています。

他にも妊娠中はつわりや偏食などによって通常よりも口腔内が不潔になりやすく、口の中に様々なトラブルを引き起こしやすい時期です。マタニティ歯科はこのような妊娠中に起こる口腔内のトラブルに対応するとともに、健やかな妊娠生活をサポートする役割を担っています。

■「マイナス1歳からの虫歯予防」に取り組む
マタニティ歯科のもう1つの役割は、妊婦の口腔管理を通して生まれてくる赤ちゃんに対する虫歯予防の意識を高めることです。

S.mutansなどのう蝕病原菌は生後19か月から31か月の間に乳児の口内へ感染し、その感染源が家族間、特に母親由来であることは歯科専門家の間でよく知られています。そして近年は母親教室やインターネットの情報を通じ、う蝕病原菌の母子感染についての認識が妊婦の方の間でも高まりつつあります。

歯科においても「マイナス1歳からの虫歯予防」という言葉とともに、妊娠期から子供に対する歯科疾患の予防意識を高める取り組みに力を入れ始めました。

生まれる前から母親の予防意識を高めておくことは、生まれてきた子供たちに予防の考え方を身に着けさせることにもつながります。つまりマタニティ歯科は妊婦の方のみを対象にした歯科医療にとどまらず、新たな予防歯科としての取り組みの一躍を担っていると言えるでしょう。

マタニティ歯科が求められる理由

妊婦の方に対する歯科治療は、これまでも一般歯科医院で通常通り対応していました。それでもあえて妊娠した女性に特化したマタニティ歯科が求められるのには、いくつかの理由が考えられます。

■妊娠中の歯科治療に対する不安が解消しやすい
妊娠中の女性はお腹の赤ちゃんの安全を守るため、普段何気ないことでも非常に敏感になってしまいます。歯科治療に関してはレントゲンや薬剤などの胎児への影響を気にするあまり、あえて歯科を受診しないというケースも珍しくありません。

しかし妊娠中は口の中のトラブルが発生しやすく、どう対処すべきか悩みに悩む妊婦の方もいらっしゃいます。そのような妊婦の方にマタニティ歯科の存在は非常に心強く、安心感を得やすいというメリットがあります。

■妊娠中の不安や悩みを相談しやすい
先にも述べたように、妊娠中の女性の体には通常とは異なる様々な変化が起こります。その変化に女性自身が戸惑うことも多く、妊娠中は不安や悩みの種がつきません。さらに近年はインターネットを介して簡単に情報を得ることが可能になっていますが、情報の多さがかえって妊婦の方を混乱させる要因にもなっています。

歯科医院を受診する妊婦の方は、このように人知れず多くの不安や悩みを抱えている可能性があります。一方で歯科医院は「歯の専門科」という認識が強いため、妊娠についてどこまで理解してもらえるのかなど妊婦にとって不明な点も多いようです。そのため歯科ではなかなか相談しづらいというのが妊婦の方の本音でしょう。

そこで従来の歯科を妊娠した女性に特化し、妊娠中の様々な事象に対応できる環境を整えることが求められているわけです。マタニティ歯科は、様々な理由で歯科を受診できなかった妊婦の方にも裾野を広げることができるため、今後ますます需要が高まると予想されます。

マタニティ歯科は女性歯科医師の活躍が期待される

マタニティ歯科は女性歯科医師の活躍が期待される

男性歯科医師が力強い信頼感を得やすいのに対し、患者様が女性歯科医師に求めるものは安心感や親しみやすさです。特に色々なことにナーバスになりやすい妊婦の方にはより細やかな応対が求められ、その点においては女性歯科医師のほうが男性歯科医師より有利と言えます。さらに妊婦の方が持つ悩みの中には女性特有のデリケートなものも多く、同性の女性歯科医師の活躍がマタニティ歯科では期待されるでしょう。

また妊娠、出産、育児などのライフステージの変化は女性歯科医師自身も経験していきます。女性歯科医師の場合、結婚にまつわるライフイベントは歯科医師のキャリアにおいて時に不利と感じることも少なくありません。
しかしながら自身の出産や育児の経験は、マタニティ歯科においては重要なスキルの1つになりえます。育児などによってキャリアの中断を余儀なくされた女性歯科医師にとっても、マタニティ歯科は新たに活躍できるチャンスの場となるでしょう。

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