女性歯科医が長く働ける環境づくり
近年の女性歯科医の増加は目を見張るものがあります。歯科医療において、特に20代女性歯科医師が増え続けています。それに比例するように、社会における女性歯科医のニーズも高まってきています。それにもかかわらず女性歯科医の中には結婚、出産により早期退職してしまう人もいます。長く女性歯科医が働けるのにふさわしい環境を整える必要性があります。
女性歯科医の需要の広がり
そもそも今日、女性歯科医はそれほど必要とされてきているのでしょうか。
まず言えるのは、女性ならではのやさしさを求める傾向が社会全体に浸透してきていることです。老若男女問わず、歯科医院に来院することに多くの人は不安や緊張を感じるものです。男性が与える強さが怖いと受け取られてしまうと、男性よりも安心感がある女性の方に流れていく人が多いです。以前は頼りないと思われる傾向にあった女性歯科医ですが、口腔内のデリケートな部分はあえて女性に診てもらいたいと感じる患者が増えつつあるのです。
女性歯科医が歯科医院に求めるもの
それだけ増え続けている女性歯科医ですが、休職や離職する女性歯科医が多いことも事実です。自身の歯科医師としての本来の希望ではないのだが仕方なく、歯科医としてのキャリアを終えてしまう人も多いのです。女性にとって結婚や出産、さらには介護などのために勤務時間を調整すること、もしくは休業することによって歯科医院に迷惑をかけたくない、と考えるのは当然のことです。具体的に言えば勤務シフトを組む上で曜日や時間の変更申請が容易にできるかどうか、という点は女性にとっては大きな問題です。もしシフトに柔軟性がないなら女性が長期にわたり働くことは難しいです。本当は一生同じ歯科医院で、長期にわたり働く希望があったにもかかわらず求めている条件がかなわなかったために、やむを得ずあきらめていく女性歯科医が多いのも事実です。女性歯科医に離職させているのは実は歯科医院の方なのです。歯科医院側が女性歯科医師に長期間ずっと働き続けてほしいと思っているなら、女性歯科医に選ばれる歯科医院になるために必要な部分は調整していかなければいけません。
女性歯科医に長く働いてもらうための環境
女性歯科医は特に20代から30代の年齢層において増加しています。今後も同様に若い女性歯科医がどんどん進出してくるでしょう。彼女たちにとってはまだこれから先の人生に結婚、出産、育児という女性としての大仕事が控えているのです。勤務先の歯科医院を選択する時にも、休業制度が確立されているかなどの福利厚生面は必ずチェックすることでしょう。これは歯科医師に限らず、女性が職場を選ぶ上での重要事項です。もし出産休業や育児休業制度がしっかりしていれば、たとえ一時的に働くことができなくても再びこの歯科医院で働こう、と思い女性は戻ってきます。逆に、歯科医院が女性歯科医をサポートしていく体制があることを示さなければ、女性歯科医の確保は厳しいでしょう。さらに上司の歯科医師や周囲のスタッフにも、女性歯科医の休業や流動的な勤務形態に対して協力的かつ理解があることが求められるでしょう。
キャリアアップできる歯科医院をつくる重要性
さらに別の点は、その歯科医院が女性歯科医師にもキャリアアップできる職場であることを示すことです。女性歯科医の多くは診療所で勤務している勤務医です。もちろん、中には勤務医を経て開業に乗り出す女性歯科医もいます。結婚や育児などのタイミングで勤務医を離職し、数年後に自分で診療所を開設する女性歯科医も増えてきています。ですがやはり開業には高いハードルがあるので、女性歯科医の開業数はまだまだ少ないのが現状です。ですから女性歯科医は出産や育児に一区切りついてまた歯科医の仕事を始めようとすると、また勤務医として診療所での勤務に復帰してくる可能性が高いのです。さらに、歯科医師としてのキャリアアップをはかりたいが自分で開業するのは厳しいと考える女性歯科医にとっては、人材育成に積極的な歯科医院での勤務はとても魅力的です。実際、良い人材育成ができる質の高い歯科医院は、そこに通ってくる患者の質も高いので、新しい治療を取り入れることや、テクニックをさらに向上させていくことが期待できます。つまり前に勤務していた歯科医院が良い人材を育成できる場所であれば、少なからず女性歯科医はまた戻ってくるという事です。
新人歯科医師を積極的に教育する
新卒で入ってきた歯科医師であれば誰でも、これから自分の技術を向上させて、いろいろな経験も積んで立派な歯科医師になりたいという理想を思い描いていることでしょう。先輩の歯科医師としては、ただ単に自分の患者を診る代わりが来たから楽になったとは思わないようにして下さい。新人歯科医師が今後も歯科医師として成長すること、さらにその歯科医院で働き続けたいと思うかどうかは、そこにいた歯科医師たちに指導に大きくかかっているのです。
■自分の技術アップに励む
歯科医師であるなら自分の担当患者全員に真摯に向き合って、治療に手を抜かずに携わっていくべきです。また院長はもちろん先輩歯科医師も、後輩や新人歯科医師の教育に関わっていくことも重要です。もし先輩歯科医師が院長に指導をあおっている姿を新人にも見せるなら、自分のキャリアをアップできるよう皆が応援したいと思っていることが伝わるかもしれません。良い院長、また院長に教えてもらっている歯科医師が多くいる場所で、今後もずっと学び続けていきたい、という動機付けを与えられるかもしれません。
■医院全体としての取り組みにも積極的に参加する
自分の治療だけに専念して、自分のレベルだけ上げようとしても意味がありません。すべてのスタッフと協力することによってはじめて、歯科医院全体が良い歯科医院になります。定期的に行われるミーティングなどで意見交換をし、他の人の意見も参考にしながら、スタッフ同士の親睦も深めつつ、チームワークを高めていくことができます。スタッフ間の信頼関係は、良い歯科医院には欠かせません。
女性歯科医が長く働ける医院
女性歯科医に選ばれる歯科医院でなければ女性歯科医は確保できません。女性が何らかの理由でしばらくの間歯科医院の現場を離れてもまた戻ってきたいと思えるような歯科医院の環境は理想的です。長期にわたり自分の働くべき居場所はここだと思ってもらえるような歯科医院をつくっていきましょう。