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歯科コラム

日本矯正歯科学会が定める認定医制度の規則と区別

一般歯科を扱う歯科医師にとって矯正は直接触れる機会のない治療であるものの、矯正治療が適応となる患者様は多いです。また、矯正歯科医にとってもカリエスや補綴治療など一般歯科医との連携を図らなければならない場面も多々あります。一般歯科にも必要な矯正歯科認定医・専門医の違いについてご紹介します。

日本歯科矯正学会とは

日本歯科矯正学会とは

日本歯科矯正歯科学会は歯科矯正学の進歩、発展をはかることを目的とし、学術大会の開催、機関誌の発行、認定医等の設定、その他必要と思われる事業を行っています。日本各地の矯正歯科医を中心に、6,400名を越える会員により構成されます。

日本矯正歯科学会には認定医規則・専門医規則があり、それぞれ認定医および専門医の制度を定めています。これは矯正歯科医療の水準を維持し向上を図ることによって、一般市民の皆さんに適切な医療を提供するために行われているものです。そのために学会は、矯正治療に関して適切かつ充分な学識と経験を有するものを「日本矯正歯科学会の認定医・専門医」としています。

取得にはまず学会への参加が必要で、入会金は3,000 円、 正会員の会費は年額で13,000 円です。


基本研修施設および臨床研修施設

専門医規則

日本矯正歯科学会認定医および専門医を取得するには歯科矯正科に属する施設での研修が必要とされます。基本的な研修を行うため、基本研修機関を、臨床研修を行うために臨床研修機関を指定しています。

基本研修機関は、歯科矯正学を主に学ぶ講座(分野)がある大学の附属病院で、臨床研修機関は、常勤の指導医か専門医1名以上が勤務し、臨床研修が可能とされる条件を満たす医療機関です。学会は、審査に合格し登録した機関に基本研修機関指定証もしくはは臨床研修機関指定証を交付しています。


認定医規則

認定医規則

まず認定医は、学会の学術大会・研修事業等に参加し研修に努めなければならない、とされています。

認定医の資格を得るためには、学会に申請を出し、学会認定医委員会の審査に合格しなければなりません。認定医の申請基準は以下になります。

1.歯科医師免許を有する。
2.歯科医師免許取得後、引き続き5年以上の学会会員である。
3.学会指定研修機関における矯正歯科基本研修修了の後、その期間を含めて、5年以上にわたり、矯正歯科臨床研修を修了している、または、同等の学識、技術、経験を有すると判断される。
4.学会の認めた刊行物に矯正歯科臨床に関連する論文を発表した。
5.学会倫理規程を遵守している。

学会認定医委員の審査に合格し、登録が完了すると認定医資格証が交付されます。また認定医は5年ごとに認定の更新が必要です。

資格取得していたり、更新後5年以内に所定の研修ポイントを獲得のうえ、学会が認めた刊行物、もしくは学術集会において矯正歯科臨床に直接関係する報告を行う必要があります。ただし、第3回目の更新からは、別に定める所定の研修ポイントのみでも更新が認められます。


認定医制度が定める指導医

認定医制度が定める指導医

認定制度では、認定医のほかに指導医を定めています。指導医の役割としては、認定医の育成および日本の矯正歯科医療における指導的役割とされています。指導医の申請基準は、以下の条件になります。

1.申請時点において基本研修機関に常勤する。
2.12年以上の学会会員である。
3.12年以上矯正歯科の臨床、教育、研究に専従している。
4.認定医である。
5.大学の附属病院で主に矯正歯科治療を行なう診療科において、矯正歯科臨床に関し3年以上の教育歴および相当の研究業績を有する者。

指導医は5年ごとに更新が必要です。資格取得後、もしくは更新後5年以内に指導者講習会に出たうえ、所定の研修ポイントを獲得し、さらに学会が認めた刊行物への筆頭者として論文一編の掲載。または、認定医更新基準を満たす3症例を展示し、審査に合格する必要があるのです。


専門医規則

専門医規則

専門医は、矯正歯科領域における診断、治療および術後管理に関して高度な医療技能と経験ならびに専門知識を有し、他診療領域の歯科医師または医師らとの協力関係にあって適切な指示を与える能力を有する者とされています。専門医の資格を申請するには、以下の項目が必要です。

1.歯科医師免許を有する。
2.学会認定医資格を有する。
3.10年以上継続して学会会員である。
4.学会の認めた刊行物あるいは学会の認めた学術集会において、矯正歯科臨床に関連する報告を発表した。
5.学会倫理規定を遵守している。

専門医委員会に申請して審査に合格し、登録すると専門医資格証が交付されます。 また、専門医は5年ごとに更新の手続きを行わなければなりません。更新は、資格取得後あるいは更新後5年以内に所定の研修ポイントを獲得したうえで、5年毎に3症例を学会の認めた学術集会において報告し、審査に合格する必要があります。


認定医と専門医の区別

認定医と専門医の区別

2016年4月現在、日本矯正歯科学会認定医は3,033名、専門医は309名と専門医は認定医に比べて圧倒的に少ないことがわかります。専門医取得の最大の難関は学会が指定した特に難しい不正咬合治療10症例の診査であるといわれています。

難易度の高い不正咬合とは、一般的な治療における精度の高さを求められる課題をはじめ、いくつか種類があります。臼歯部の咬合に異常がない開咬は、舌や口唇の筋圧に大きく影響され、治療経過2年間で後戻りしやすく難易度が高いといえます。

舌や唇の動かし方をトレーニングするのは歯科衛生士であり、医療機関の総合力が問われる項目です。また口唇口蓋裂症例は矯正の治療的には特別困難な内容ではないもの、小児科および口腔外科など他科歯科医との連携が審査基準となり、包括的な歯科医療として矯正治療をいかに応用できているかが課題です。そして、顎変形症では完全な顎離断術をするか、骨延長術を実施していることが条件で、外科矯正を行った矯正治療例か、骨の形態に欠損が見られる症例で矯正治療例を示す課題です。

全国の認定医や専門医は日本矯正歯科学会のHPの一覧で検索することができます。一般歯科医院にいらした患者様が矯正治療を希望された場合、まず唇顎口蓋裂・顎変形症である場合は専門医のいる機関が望ましいといえるでしょう。唇顎口蓋裂および顎変形症は症例数としては多いとはいえず、すべての矯正医に症例数が十分とはいえない現状にありますが、指導医と認定医のもっとも大きな違いは稀なケースの症例数です。

また、矯正治療は治療開始までの資料集め、診断までにかなりの手順と時間を必要とします。外科的矯正を伴う場合は、診断のタイミングが保険適用の可否にも影響し、手順を誤ると患者様に時間的・経済的負担を伴うことがあります。

矯正治療をはじめるときには、まず認定医であることが大前提といえます。患者様の重症度に合わせて、専門医での受診を勧めるかどうかを見極めることが大切です。


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